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時の流れと娘の言葉

 

 

 

 春がやってきて、俺たちは墓に行く。
 

 汐がもう小学一年生になろうとしている春の日だった。

 時の流れと言うものは早い。

 いつの間にかランドセルを背負って学校に行こうとしている。

 今では一日中ランドセルを背負っている程だ。

 しかし・・・。

「・・・汐、ランドセルは置いて行こうな」

 汐は朝起きてから、ずっとランドセルを背負っていた。

「・・・ママにもみせたいもん」

 くっ、その言葉は反則だろう!

「ママはいつだって俺たちの事を見てるからそんな事をしなくてもいいんだぞ?」

「パパがそういうならやめる」

 汐はちょっと不満そうな顔をしてランドセルを置いた。

 さすがにそれを持ったままで墓参りはいかんだろう。

 車があるならよかったんだが生憎車は持ち合わせていない。

 すまんな汐、甲斐性がなくて・・・。

「パパ、どうしてないてるの?」

「ん? 自分の甲斐性のなさに呆れを通り越して哀しいのさ」

 哀、職業士(せんし)の名前は伊達じゃないぜ(涙)

 ちなみにこれは芳野さんのニューシングルのタイトルでもある。

 芳野さん曰く俺をイメージしたとの事。

「哀しいけど、これ現実なのよね」

 思わずそんな事を口走ってしまう。

「じーふぁいたーのりのモノマネ?」

 なんですと!?

 6歳が知っているネタじゃないだろう!?

「アッキーがそういってた」

 くそぅ、砂漠の虎の声に似てるからって!!

「ほかにもしってるよ? やめてよね・・・」

「ダメだ。 汐、主人公のあるまじき発言だけはやめてくれぇ!!」

「わかった」

 種の主役などチート以外の何者でもないわぁ!

「・・・せめて、女の子が言うような事を言ってくれ」

「うん」

 汐は本当にわかったのかわかっていないのかよくわからない返事を返した。

「んじゃ、準備は出来てるな?」

 汐に声をかける。

 汐はその言葉に頷いた。

「よし、行くぞ?」

「おー」

 出かける前にいつもの言葉を出して小さな体で精一杯のやる気をアピールする。

 鍵を閉める前に俺は渚の写真しかない部屋を見つめる。

「・・・行ってきます」

「いってきます」

 俺たち親子は自分たちの家を後にした。

 

 

 

 

「時に汐、小学校に入学するけどそれについては不安とかないのか?」

 汐と手を繋いで桜並木の坂道を上がる途中でそう聞いてみた。

 その言葉を聞いたとき汐は右手の人差し指を顎にあてながら考える

 少しだけ考えた末にこんな言葉を言った。

「ふあんはあるけどたのしみ」

 小さく微笑みながらそう言った。

 その言葉を聞いて俺は『そっか』と呟く。

 内心、親として寂しいような嬉しいような感じだった。

 時は人を変える。

 それはこの子も俺も同じ事で・・・。

 確かに何も変わらずにいられないよな。

 そうだったよな、渚。

「楽しいことを見つければいいか・・・」

 なんとまぁ、何も知らない頃もあったな俺も。

 それを簡単に見つければ苦労しないっての・・・。

 でも、何も知らないからこそ言えた言葉だったって訳だ。

 その事が今はよくわかる。

 あの時の渚の笑顔を見ればそう思える。

「みつけられるよ、きっと」

 不意に汐の言葉が俺を呼び戻す。

 汐はただ、笑っていた。

 いつも通りに小さく笑いながら。

 その言葉、渚に聞かせて上げたかった・・・。

「・・・ああ、そうだな」

 少し、目頭が熱くなる。

 俺は娘に泣きそうな顔を見せないように上を向いた。

 

 

 

 

 ふと、前の方に(と言っても道から外れている所なのだが)赤い髪とエプロンが目印な人物を見かける。

 ・・・どう見てもオッサンだな。

 オッサンはこっちに気付いたのか猛スピードでこっちに向かって来る!

 俺が何をした!?

「汐、走るぞ!」

「うん」

 汐と俺はダッシュで逆方向に走り出した。

 そりゃ、はいがらさんも通らないような道を異常な速度で突き抜けてくるいい歳したオッサンがこっちに向かってくるのだから。

 全・速・力で逃げるに決まってる!!

「・・・アッキー怖い」

「孫に怖がられてるぞオッサン!」

 まだ、声が聞こえない距離のはずなのにオッサンはそこで崩れ落ちた。

「すんげぇ、地獄耳・・・」

 孫の声はよく聞こえる年齢不詳の祖父ここに在り。

「・・・どうしよう?」

 汐は困った顔で俺に聞く。

 珍しい表情なのでちょっとしたハートブレイクが発動!!

『朋也は8500のダメージ!』

『朋也は死んだ!』

『汐は経験値440をもらった』

 ・・・訳がわからんわ!

 しかも、ちょっとしたダメージじゃねぇ!!

 経験値がダメージ量と比べて少ねぇし基準がわからんだろ!

 ってか、汐にちょっとしたハートブレイクなどあるわけない!

 ハートブレイクどころかハートクラッシュに決まっているだろうが!

 いつも、ハートクラッシュのなりすぎで心臓(精神的な)が崩壊し始めているぜ!

 うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!

 ・・・失礼。

 とツッコミと自我崩壊は置いておいて。

 汐に返答を返そう。

「そうだな、様子を見に行こう」

 うんと汐は頷いて俺の後に着いて来る。

「オッサン、生きてるか? なんであんな速度で追いかけてきたんだ? 俺が何かしたか?」

 理由と生きているかどうかを聞いてみる。

「・・・ふっ、汐がいるなら例えゾリオンの最中でも地の果て、海の果て、宇宙(そら)の果てでも追いかけるのが俺の使命なのさ」

「・・・ただのストーカーだろうが」

 つうか、ゾリオンかよ。

 こんな所でもやるんだなゾリオン。

 汐がオッサンの方を見て哀しそうな目でこう言った。

「・・・アッキー、きもちわるい」

 汐が少し引きながらこんな言葉を言ったのは最初で最後だと思う。

「・・・・」

 その言葉でオッサンは奇妙な冒険をする人も顔が真っ青なぐらいに砂となって跡形もなく消えた。

「うわぁ・・・」

 その砂は風に乗って何処までも飛んでいった。

「パパ、いこう?」

「ああ」

 さらば、オッサン。

 俺はあんたを忘れない。

 

 

 

 

 話を変えよう。

 俺たちは墓に着く前に花束と線香を買う。

 サァッと風が桜と共に俺たちの頬を撫でる。

 それは余りにも綺麗で優しかった。

「汐、ママを掃除しような」

「うん」

 汐はたわしで濡らした墓石をゴシゴシと擦る。

 俺は花を添え汐には届かないところを擦った。

 線香に火を点けて二桁にも満たない数を汐に渡す。

「それを墓の前に置いて両手を静かに合わせるんだぞ」

「わかった」

 汐は静かに手を合わせ渚に黙祷を始めた。

 そして、黙祷が終わり汐は俺の方へ駆け寄る。

「ちゃんとお話したか?」

 汐はその言葉を聞くとゆっくりと頷いた。

「うしおはママにうしおをうんでくれてありがとうってパパがすきなママがだいすきだよっていった」

「・・・そっか」

 俺は渚の墓に近づいて静かに黙祷を始める

 目を閉じるとあの時の笑顔を思い出して、俺は泣きそうになる。

 ただ、あの日のように抱きしめたかった。

 一時、それが幻でも構わないと思ったときもある。

 汐が生まれる時、どんな親になるのかと話していた時が一番輝いていたと俺は思う。

 けれど、振り向いても渚はいない。

 居るのは汐だ。

 俺たちは今を懸命に生きている。

 ささやかな夢をいつまでも見続けたらいいなと切に願う。

 例え、それが険しい道だとしても。

 険しい道は渚とたくさん通ってきたから。

 辛くないと言えば嘘になるけど渚と共に過ごした日々は確かに俺を強くしてくれた。

 いや、強くなんてない。

 ただ、前を向いて歩けるようになっただけだ。

 逃げていたばかりの俺だから。

 そんな俺だけど今は泣いていいよな?

 渚の墓を見て汐が、娘がこんな言葉を聞いたら親なら誰だって泣くはずだろ?

 少しだけ、少しだけ上を向いて涙を流さしてくれ。

 お前がいる空を見上げながら

 今だけは・・・。

「パパ?」

「・・・なんでもないよ」

 俺は汐にそう告げて歩く。

 涙を娘の前では見せない。

 見せるのは一人前になった時だ。

 渚が居なくなってから幸せは来ないと思っていたけど幸せを与えてくれた人は居た。

 だから、俺はこう思う。

 渚の分まで精一杯生きていこうと・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 オッサンはあの後行方不明になってアフガニスタンまで飛んでいったらしい。

 アフガニスタンで銀色の髪の女性と紫色に近い長い髪をした女性と共に紛争地域鎮圧に成功して生還してきたらしい。

 その時の異名が『紅い彗星の虎』で女性たちが『白銀の星』と『紫色の隠者』だとか・・・。

 使用武器はゾリオンで女性たちは蹴りと分厚い本みたいだ。

 それで、米国の大統領と友達になったって言うのはどうかと思うぞオッサン・・・。

 春休みの真っ只中だから女性たちは仕事に支障がなかったみたいだが・・・、それでも生き抜けた上に鎮圧までするとは。

 俺の周りの人間ってスゲエ。

 とか、世間に知られてたり知られてなかったり。

 これは別のお話。

 

 

あとがき

 どうも、投稿は初めましてです〜

 朱鷺です。

 いや、あの〜クロイさんのCLANNAD祭になんとか間に合いましたが如何でしょうか?

 ここだけの話なんですがわたしはサイトを持ち合わせていません(泣)

 と言う訳なのでクロイさんの感想は掲示板のほうでよろしくお願いいしますm(__)m

 それでは〜

 

 

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